in オペラ OPERA

怒りのアイーダ!!! パリオペラ座バスティーユ

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Aida Bastille

昨日の早朝に日本から戻りその晩、大雨の中を向かったのはパリオペラ座バスティーユでした。演し物はヴェルディの「アイーダ」。
苦労して取ったオーケストラ(平土間)一列目指揮者の左斜め後!予約開始時には普通取れないこの手のチケットは、あえてしばらく待ってから、リターンチケットをねらいます。ただしシーズン始まって間もなく、またパリでは10年以上も上演されていないと来ては、チケット争奪戦は思ったより激しくすぐに完売。リターンチケットもなかなか出ません。
http://ja.wikipedia.org/wiki/アイーダ
かつダブルキャストのこの公演。わたしはやはりラダメスはこの人で見たかった(というか聴きたかった)!でもそれは皆同じ!デビュー当時から注目しているアルゼンチン人のマルセロ アルバレスくん。殿様のような顔にクマのプーさんのような体型。でもファンはわたしだけじゃないぞ。

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それでも2週間毎朝しつこく電話をかけ続けてとうとうチケットを手に入れました。しかも一列目。舞台のかぶりつきです。皆さんオペラファンはそれぞれ座りたい場所があるけど、わたしの場合、楽器の音が強かろうと、偏っていようと、なんたって一列目が最高の場所。特にお気に入りの歌手が歌う姿は出来るだけそばで見たいし聴きたい!
指揮者の奮闘する姿もすぐそばでこちらまでコーフン!時には身を乗り出してイングリッシュホルンやチェロのソロも聴いちゃう。
ほとんど音楽家と一緒にオペラを生きられる特等席です。また通常最高と言われる正面一階のバルコニーで聴くのと、二階で聴くのと、また舞台に近い脇で聴くのと、その度に違う経験を出来るので、同じオペラを何度も観に行って聴き比べるのもなかなか。そしてこの晩のわたしはお気に入りのマルセロくんの真ん前!キャーーー!
と興奮しているうちにとうとう開幕。
ん?なぜイタリアの国旗?ヴェルディだからかな?と思っているうちに音楽は始まりました。実は今回のアイーダは新演出で、だいたいパリで新演出というと要注意ではあるのですが、でもアイーダだしエジプトのお話だし、まさかそんなにメチャクチャには出来ないのではないかと油断していました。
演出家はOlivier Py、悪名高いことは高かったのですが・・・
その後には迷彩色の軍服が登場、お気に入りマルセロくん演じるラダメスはナポレオン?18世紀の総督??が戦車に乗って?!?そしてとうとうアウシュビッツの裸のユダヤ人のたくさんの死体が牢屋の中に!!?!!!このあたりからわたしは気持ち悪くて全く舞台を見られなくなり、目を閉じて音楽だけ・・・
このとき舞台は第二幕第二場だったのですが、とうとう観客の怒りは爆発。素晴らしい合唱が終った瞬間、本来はここで大拍手になるはずが、会場中からブーイングが!ものすごい野次が飛び、今までにもブーイングが出る演出はあったけど、人々の怒りがここまで爆発したのは初めてでした。指揮者が音楽を続けようとしても、あまりにも観客のブーイングがすごくて中断せざるを得ず、とうとう指揮者がわたしたちの方を向いてタクトで静まるよう指示しました。演出へのブーイングと同時に音楽家に向けてのブラヴォーも聞こえます。たいへんな騒ぎ。
このあともクークラックスクランの白装束と燃える十字架が出て来たり、国粋主義者に対するプラカード?が出たり??とうとう最初から最後まで一度もエジプト関係のものは一切登場しませんでした。

演出家が何かをオペラの中で語ろうとするのは現代よくある話ですが、作曲家、物語を完全に無視し冒瀆し、個人のメッセージ伝達の手段にオペラを使うことは、わたしは納得出来ません。
今回のOlivier Pyは人種差別する社会、軍力の支配、白人至上主義などへの痛烈な批判をこのアイーダを使って行ったと思われます。テーマ自体はそんなにはかけはなれてはいないのかもしれません。しかしながら、グロテスクな演出で意表を付くことだけに集中したかに思える数々のショッキングなシーン、しかももともとのストーリーに何の関係もない題材の数々は、ヴェルディの素晴らしい音楽、音楽家たちの奏でる素晴らしい演奏、指揮者の情熱に対する観客の賞賛を「怒り」によって消し去るほどの影響を出しました。この演出家はこれで満足なのでしょうか。だとしたら完全な自己満足で、そのためにお金を出してオペラ座へ足を運ぶ人々を馬鹿にしています。「金返せー!」と怒鳴っている人もたくさん居ました。
怒りの「アイーダ」です!

それでもそれでも、歌手は全員素晴らしく歌い、こんなひどい演出の中でも出来る演技をし、ブーイングの後も指揮者は精力的にオーケストラとコーラスを導き、そしてわたしのマルセロくんはラダメスの最後を死体の山の前で甘く切なく歌いアイーダは幕を閉じました。結局音楽は演出に負けませんでした。音楽家たちはヴェルディを救ったのです。会場を出るときわたしの頭の中を巡っていたのはもう死体の山ではなく、アイーダの旋律でした。
そういう意味で音楽家の勝ちであり、音楽、ヴェルディの勝ちでした。
でもやっぱりみなさんに観て頂きたいのはこの「アイーダ」では無く、わたしの知る限り最高のフランコゼッフィレリ演出のこの「アイーダ」です。

AIDA DVD Metropolitan Opera

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